鍋島焼の新たなカタチ
江戸時代、鍋島藩の御用窯が現在の伊万里市大川内山に築かれ400年近く経ちます。
朝廷や大名家への献上品として最高の磁器の白さ、最高の絵付けの技術を駆使し”鍋島焼”として一般の方にはお目にかかれない磁器でした。
その技術と歴史が史が育み、つむいできた伊万里焼「鍋島」。
江戸時代は室内の光が暗く、はっきりとお皿の存在を示すため鍋島焼は白く絵付けも色合いがはっきりしたものになっています。
しかし、現代の生活スタイルに昔から育んできた鍋島焼の姿が合うかというとどうでしょうか。
第一九代・市川光山が目指す鍋島とは、江戸時代の鍋島ではなく、そうかといって目新しいだけの鍋島でもなく江戸時代の鍋島がそのまま続いていたらこうなっているだろう鍋島です。
黒鍋島とは令和より”光山”が取り組んでいる新しい鍋島焼でございます。
黒の素地に鍋島焼伝統の技術で描いた作品であり下書きなしで幾何学の文様をフリーハンドで描いた作品が特長です。
「麻の葉・七宝・紗綾形・亀甲」などの文様や光山ならではのデザインを加えた一点一点、手描きで仕上げました作品でございます。
後継者の育成
黒鍋島は後継者の育成にも有利なものと考えます。
大量生産、大量消費、機械化などなど、時の流れと共に振り返ってみれば後継者が育っていない事に気づきました。
磁器の源となる陶石。
真っ白な磁器を作るには鉄分を含んでいる陶石では作品にならずかなりの手間がかかります。
黒鍋島ならそのような手間がかからず陶磁器原料に従事されている方への負担も少なくてすみます。
黒鍋島は白い磁器とは違い鉄粉が出て商品化できず躊躇しがちな後継者が黒い磁器により勇気を持って轆轤に挑戦できます。
黒鍋島は下書きを程す事が出来ないため、絵付けはすべてフリーハンド。
今では主流となっている下描きの絵付けではなく全体のバランスを見ることができる絵付師の技術向上にも寄与します。
鍋島の伝統を新たな発想を付加し継続的に技術を継承していくには後継者育成は命題です。
伝統と格式のみを追求するのではなく黒鍋島が多くの方に愛されることで技術をもった後継者が生まれてくることを期待しています。